もし、アップルがグラスを発明したら? - 発明と創造の源泉 -
UEIの清水さんにお聞きしたお話なのですが、アラン・ケイ氏はグーグル・グラスを「narrow」と評したのだそうだ。非常に興味深い!
グラスを幾らか触ったことがある人ならイメージ可能なこの言葉の持つ意味は極めて深い。それは利用範囲かもしれないし、視角視野なのかもしれないし、あるいは操作性や体験性を指したものかもしれない(「narrow」という言葉がどの部分でしっくり来るかはGlass利用者の体験次第で変わるだろう)。
いずれにしろ、その印象的なエピソードをお訊きして直ぐ思ったこと。それはスティーブ・ジョブズなら、この極めて意欲的で先鋭的なウェアラブル・デバイスをどう呼んだだろうか?ということだ。
僕のとても素朴なイメージでは、彼はグラス・デバイスを決して手掛けない。さらにはスマート・ウォッチも手掛けない。そういったスマートデバイスに思い切り辛辣な皮肉あるいは箴言を述べ(切り捨てて!)、ユーモアたっぷりに(アイロニカルに!)笑い飛ばしただろうと想像する。
では、さらにそれを受けてどうするのだろうか?と言うと、(僕の勝手な想像の範囲では)寧ろiPhoneのフィッティングのスタイルを大幅に(でも、エレガントに)変革したのでは?と思う。つまり、ウェアする方法と、それに対応したデバイスの改良で大きなイノベーションを引き起こしたのではないか?と想像できる。
昨今ウェアラブル・デバイスが問題提起している課題のほとんどはハンズフリーを含めてフィッティングの問題にほぼ帰結する。
いかに取り出して、起動し、操作し、目的を達成するのか?のプロセスをいかにウェアするのか?あるいはいかに操作性を単純化し快適にするのか?の具体的な具体的な取り組みをもって大きな変化を惹起するのではないか?
そして、そこで試されるべき多くの試行錯誤はある意味、既にiPodの多種多様なバリエーションによって返す返すもスタディをされているのだ。
腕にバンドで取り付け出来るタイプのiPodは複数種類有るし、VoiceOverやシェイクすることで操作可能なiPodも存在する。あるいは、そもそもNIKE+と組み合わせたモニタリングや、ランニングをしながら音楽をダイナミックにPlay backする機能などもiPodに長らく実装されている。
そもそもiPod nanoの一部ジェネレーションは明らかにスマートウォッチ・テイストを持った物だし、それらしいバンドも提供されていた(バッテリーの持ちが問題だったのは今も同じだ)。
だから、より小型化されたiPhoneは、もしかするとフレキシブル液晶やフレキシブル基板を組み込まれるかもしれないし、3Dモデリングされたフレキシブルな筐体と組み合わせられるかもしれない。あるいは、それと組み合わされたフィッティングパーツが印象的に登場するかもしれない(iPodもiPadも、ケースの新発明が過去に大きなトピックになったことがある)。
もしかするとそこまで進化すれば、それはもうiPhoneではないのかも知れないが、いずれにしろアイウェア型のアイウェアをいきなりデバイスとして新規発明するというアプローチではなく、iPodやiPhoneのウェアリング出来るスタイルを追求する中で次の大きな飛躍をもたらすような試行錯誤をしたのではないのか?というのがアラン・ケイ氏のコメントを聞いた瞬間に直感したイメージだ。
単なるハードウェアではなく、顧客満足の最大化を行うことがアップルの手掛けてきた素晴らしい製品開発の歴史だった。そうすれば、自然にイメージできるのはウェア出来るスマート・デバイスの理想型であって、意表を突く全くの新発明ではないだろう。