以心伝心記

Technology is anything that wasn’t around when you were born.

最初の小さなひとつを選び獲ろう!アジャイル的スタートアップの薦め

 

Youth Venture Summit でお会いした学生さんのビジネスプランをお聴きするために先週末ブルックリンパーラーに伺いました。そこで気付いたこと、考えたことを幾つか書いておこうと思います。

まず、個人的な挫折の体験(僕も数え切れない程あります!)や震災の衝撃など、起業をする際の個人的で哲学的な動機付けを持ち、それを通じて世の中に主体的に関わって事業を興したいと言うケースは凄く増えているのだろうと思いました。これは、凄く良いことですね。

そして、それを社会起業家の枠組みだけじゃなく、ソーシャルな製品開発をコアにした起業家になろう!という動機付けとするのもとても良いことだなと思いました。なぜなら、コミュニケーションやコネクションをいかに再定義するのか?の問題意識は、もしかすると世界を変え得る大きな製品に結実する可能性がありますし、その結果、具体的に世の中をより良くする可能性があるからです。

そして、事前に彼に見せてもらったプレゼン資料は、少なくともその情熱や理想の面では素晴らしい物でしたし、僕自身も共感共鳴する部分が非常に大きかったのです(だからこそ、日曜日の夜に新宿でお話をお聴きしようと思って出掛けたのです)。

ただ、そこで志しているビジョンをどのように具体化するのか?のメソッドや経験がない事だけが不足部分だったのです(それは全く問題ありません、とても良くあることです)。

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そこで僕が彼に見せたのは、今頓智で開発しているプロトタイプでした。これはたった三画面だけのプロトなのですが、人の出会いや繋がりを大きく変える可能性が潜んでいると考えて開発しています。

そして、それを開発する際に四苦八苦して作成したインセプションデッキ(開発するアプリの骨格になるアイデアや機能、優先順位などを明らかにしたもの)もお見せしました。これも出来上がった最終型は、プロトタイプのアプリと同じく凄く簡単でシンプルなものです。

僕がそこで伝えたかったことはとても簡潔で「小さい機能を大きな構想に向けて、非常に短いサイクルでユーザーに向けて届け続けて行く」考え方です。その考え方なら、たとえ何億円何百人必要な製品だとしても、最初期には実に小さく軽く、スピーディに進められます。それは言い換えると「何か一つを選び、他の多くを捨てる行為を頑張ろう!」ということです。

さらに、これがとても大切なのですが、その「最初のひとつを決める視点や感性、価値観」。これをとにかく常に鋭く持ち続けること。そこに自分らしさをしっかり入れ込むこと。それがきっと起業時のチームのカラーやカルチャーになります。

スタートアップの遺伝子って、そういう最初のコダワリに大きく関係している気がします。しかも、その見極め、取捨選択の行為は、決してアプリの中やウェブ内に閉じた行為ではなくて、自分の生活や家族や生き方、それこそその本人の哲学に凄く根ざした行為だと思うのです(たとえば、とても気軽な思いつきだって人生哲学を反映します)。

また、「その最初のひとつ」を選び出し、それ以外を思い切って捨て去らない限り、いつまでもそのチームはスタートを切れないし、コストに見合った投資を得る為の無理を強いられてしまいます。それは凄く不合理で面白く無いことです。コストをひたすら低減して(そのためにもnice to haveは後回しにする)顧客のニーズを掘り起こす洞察をクイックに深めて行く為にも「最初の一つの小さな機能」をとてもシャープに選び取るべきです。

そんなことを自分なりに懸命にお伝えしたつもりなのですがどうでしょう?もしかすると、要は「アジャイル勉強すれば良いんでしょ!」って話に過ぎないのですね。

でも、そういう決まりきった作法や仕組みの「お勉強」をする以前に「自分は何をしたいんだ?何を誰に届けたいんだ!」を深く自問自答すること、そのとき流儀や流派は実はどうでも良いことです!(道具が目的になる愚もあります。形式にとらわれ過ぎるのも考えもの)それより自らの声に耳を澄ましましょう。耳を澄ましながら、ストーリーテリングやプロトタイピングをどんどんやりましょう!

悩んで、考えて、行動して、試して、失敗して、学んで、恐れず、語り合って、見せ合って、日々、どんどん開発しましょう!そのためにこそ、何を誰に届けるべきなのか?日々自問自答することが欠かせないのです。何も特別なことではありません。

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