以心伝心記

Technology is anything that wasn’t around when you were born.

恐怖心という原動力

f:id:roadracer:20150112163727j:plain

多くの場合、回答は恐怖心の中にある。

何かを恐れて、それから逃げようとしている時、もしも自分の視点を変えられるなら、その恐怖こそが解決すべき課題だったと気づく。

それどころか、その恐怖心こそが自分の行動の動機付けであったことに気づく。

 

考えてみよう。たとえば「コミュニケーション」というのは多くの場合、とても楽しく素敵な行為だ。が、一方では困難極まりない、日々のトラブル発生源でもある。人は人とコミュニケーションをせずには生きていけない。が、そこからは数え切れない困難を引き受けざるを得ない。

コミュニケーションは極めて楽しく、生きていく上での偉大なエネルギー源だ!でも、その裏返しとして、たとえば人からなかなか理解されない時。人から欺かれてしまって落胆した時。大事な人と心を交わすことができずに、強烈な孤独感にさいなまれた時。そういったとき、コミュニケーションは人生の困難事として大きく立ちはだかる。

 

確かにコミュニケーション問題の解決は人類共有の大きな課題だろう。一方、それは恐らく永久に片付くことのない無限回数のルービックキューブのようなものだ。

だから、起業家がその課題に強く惹かれ起業を決意するとき、強い思いを抱いた時点の理想像と、それに囚われて避けがたく心中に抱く強い恐怖心の間には、なんら距離はない。むしろ、その恐怖心の強さこそが、起業家の行動の強い動機付けになる。

 

自分の場合は母親との距離感や、もしかするとその関係が断絶するのではないか?という恐怖心が、とても根強いテーマとして心中にあり続けた。それに気付いたのは、たまたま共同創業者と語り合っていた時なのだけど、起業の動機付けを内省してようやく辿り着けた。つまり、そう簡単には気づけない事実だった(恐怖心の内側を覗き込むのは恐ろしいことだ)。

そして、その恐怖心による囚われは、単なる起業の動機付けや製品開発への拘り(あるいは偏り)に留まってはいなかった。それは、起業時のチーム作りや起業後のチーム内での関係作りや組織のマネージメントにまでも大いに影響を及ぼしていた。

 

自分自身のコミュニケーションのスタイルそのものに、その恐怖心がとても強く影響していたことに驚きながら、同時に、そこには両側面があると感じた。

つまり、その恐怖心は固有の強みを自らに与えてくれている。たとえば、コミュニケーションを通じて関係性を構築する能力を磨いてくれている!一方その反動として、コミュニケーションが機能せずに関係性が断絶することへの恐怖心が強すぎる!それは同じ根から発生している両側面だ。表裏一体の現象だ。

 

それは結果、ある種のいびつな力関係をもたらし、チームの信頼関係を作っていく上での弊害にもなる。あるいは、良い面としては、自由闊達でフランクな場を作るという点では非常に貢献してくれている。要するに、強みと弱みとは、あるひとつの恐怖心を起点にして成立していたという発見だったのだ。

自分の中には、まだまだ確たるソリューションは存在しない。無いのだけども、少なくともそういった恐怖心をみつめて率直に向き合わない限り、その強みも弱みも中途半端ななまま、単なる恐怖からの逃避に終わってしまう。あるいはその恐怖心を無視しようとする浮遊(高揚)にしか終わらないだろう。

 

良い面でも悪い面でも、強い恐怖との向き合いからは多くの発見と理解が得られるだろう。そして、それは起業家としての特性や傾向を自ら把握して、その固有の性質に根ざした、固有の製品を手がけるための良いガイドマップになるのだろうと感じるのだ。

f:id:roadracer:20150112171430j:plain