以心伝心記

Technology is anything that wasn’t around when you were born.

和魂洋才を超えて - シリコンバレー 移民の力が持つ凄さ -

アメリカのハイテクトップ企業の60%が移民一世か二世により創業されていること。及び、それらが創出している時価総額は実に200兆を超え、従業員数は120万人を超える。(シリコンバレーと移民)この状況は日本対シリコンバレーとも言うべき(よく語られている定番的な)図式について考えるときに、大きな気づきを含んでいると思う。


例えば「なぜ、日本にスティーブ・ジョブズがいないのだろうか?」の問いかけに対しての「アメリカでも、実際彼以外にはいませんね」と言う質疑応答には、それなりに納得感がある。

シリコンバレーの革命的な進化プロセスを日本対シリコンバレー(といった二項対立の図式)で考えることには、どうも限界が有るように感じる。それは果たして輸入したり、輸出したりできるものだろうか?或いは移植したり、ライセンスされたり出来るものなのだろうか?

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日本的シリコンバレーとは何だろう?

例えば、移民人口が10%以上いて、上場企業の多くで日本人以外が多数経営に携わっている様な環境が、果たして本当に望まれているのだろうか?(日本の在留外国人は200万人前後に過ぎない)
それには恐らく"シリコンバレーを創出する"という比較的受け入れやすい"美辞麗句"を超えた、もっと巨大な課題・問題が有るだろう。移民政策と異文化受容の長期的プロセスは、単なる産業政策を超えたもっと俯瞰的歴史的視野による国民的取り組みが欠かせないように思う。

 

はたまた、そこまで極端に振り切らなくても、もっと別の見方も可能かもしれない。
例えばシリコンバレーと日本を内包した上で、さらに全体的な視点、つまり地球規模でのイノベーション環境を構想することはできないだろうか?

そう、僕らはどうしても「海外」とか「外国」といった、「内と外」の「対立的な二項図式」で考えがちだ。生得的にそういうスキームをイメージすることにどうしても慣れてしまっている。

 

和魂洋才の二項対立図式を超えて。

だから、シリコンバレーは「受け入れるか」or「受け入れないか」の議論になりがちだ。

或いは、「シリコンバレーから学ぶ」と言う時にも「それをどうやって内に取り入れるのか?」と、どうしても考えがちだ(直ぐに和魂洋才という歴史用語が再浮上するが、これも和と洋とがそれぞれ対峙する形式になっている)。それはどうにも「トポロジー(位相)」として、定式化してしまっている様に感じられて仕方がない。

でも、シリコンバレーに学べ!式のカンファレンスの壇上に日本人ばかり並んでいる様子には、何か違和感があるし、例えば海外からスピーカーを招いたとしても同じ環境を共に作っていく仲間同士というよりは、寧ろ明治維新の頃のように「海外からの啓蒙を受け入れる」スタンスにどうしてもなりがちだ。そしてそれには、どうにも落ち着かないムズムズ感がある。

 

シリコンバレーは本来地続きの全く同じマインド(「テクノロジーと楽観主義で世界は変えられる」)によって動いているというのが、僕の偽らざる正直な気分だ。

日本にそれを持ってきて日本版のシリコンバレーを創造するとして(例え、それがミニチュア版だとしても)素晴らしい価値が有ることは容易に想像できる。そう、それは夢の様な事だ。でも、日本から、オリジナルの価値を提供し、シリコンバレーも巻き込んで地球規模で普及させて行ければ、その効果と成果はさらに著しく大きいだろう。

 

例えば、先日の記事掲げたチャート内には日本人移民の存在は未だ居ない。

日本人が従来の日本人の枠組みを超えて、こういった素晴らしいカンパニー創出に本質的にコミット出来るようになった暁、それは果たしてどんな価値を母国にもたらすだろうか?

そういう視点でシリコンバレーへの参画を考えてみると、その立場、態度や行動は大きく変わるかもしれない。そう、ソニーの末裔たる我々にできる事はもっともっとあると思う。

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補足:多様性に対する同一性というのも多様な中の価値軸なので、日本的均質性や単一性を一概に否定出来ないのでは?その独自性を世界市場でいかに活かすのか?など、違う視点・視座を持つことも出来るのでは?と思う。

残念ながらこのブログには具体的な解答も明快な方向性も何も含まれていない。ただ、依って立つ価値軸を切り替えることで、新たに見えてくる可能性はあるのではないか?

 

参考:

シリコンバレー発 ビジネス最前線

シリコンバレーはなぜ強いのか。 - シリコンバレー起業日記