以心伝心記

Technology is anything that wasn’t around when you were born.

"製品"とは未来の顧客へのメッセージだ。

"製品"とは未来の顧客へのメッセージだ。

少なくともこの先二年あるいは三年後の未来を明快に伝えられなければいけない。未来を描けないと、その製品は現在価値しか伝えられない。であれば、単純に現在時点での機能や仕様の比較でしか価値を測れないので価格勝負の製品比較で安易に買い叩かれてしまう。

未来を描出するには技術を駆使してこそ成る世界観への圧倒的憧憬と実現に向けた情熱とが製品メーカーには不可欠だろう。

それには確固とした哲学や美学が欠かせない。だが、過去ばかりを観ていては未来を描けない。そしてそれを届けるに足るだけの不断の覚悟や執念が要る。常に臨機応変でありながら心の通った哲学や美学が、それを実現するに足るだけの起業家精神を駆動する際、初めて"未来"を描き出せる新製品を世の中に届けられる。

 

要するに、"出来るか出来ないか"では無く"為すか為さないか"だ。

「すべてが失敗したら、製品開発の原点に戻ろう。つまり、自分が使いたいものを作るのである。そうすれば少なくとも一人のユーザーを確保できる。」

これはガイ・カワサキの有名な警句だけども、製品メーカーにとっての哲学や美学は、それを実現して世の中をより良く変えたい創業者の"これを何としても欲しい(そして、それはまだ世の中に存在しない)"からこそ生まれるべきだ。

自分の強い欲求をスタート地点にするからこそ深く洞察することが可能だし、その開発の原動力を自ら燃やし続けることが可能だ。または、その製品を欲している人間を巻き込む力にも事欠かない。

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製品は世界に向けた起業家の未来ビジョンの提示だ。それを世の中に向けてメッセージするためにはあらゆる製品価値の磨き上げ、可視化、先鋭化が欠かせない。

そういった行為への専心専念こそが、より優れた新製品実現の前提条件だ。フォーカスを絞ることはシンプルで美しい製品の前提だが、それを成す上でも創業者の哲学や美学がくっきりと浮き彫りにされ、あらゆる製品性に反映されていなければならない。

スマートフォン、タブレット、そしてウェアラブル。そういった製品ジャンルそのものを形作るような本質的価値の追求と鍛錬以外に何をするべきだろうか?

 

新しい製品ジャンルを打ち立てるくらいの意思意欲抜きに製品開発を進めるなら、それらは常に単なる模倣品の開発あるいは改善改良に陥るだろう。

そういった行為の連続が何をもたらすのか?は、目下の家電メーカーの状況を見ることが分かりやすい。新製品をコピーされている間は未だ良いのだが、コピーすることしかできなくなったら、そのメーカーの開発する製品の付加価値は限りなくゼロになってしまう。

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