以心伝心記

Technology is anything that wasn’t around when you were born.

SXSW2013はもう始まっている(追加)

もういい加減書き尽くしたと思っていたのですけど、あれだけの膨大な体験のあとですから、幾つも書き忘れていることがありました。

まず、SXSWへのエントリーですが、ひとまず欠かせないのはバッジの購入です。これはインタラクティブ以外にフィルムとミュージックがありますが、全部にアクセスできるプラチナなど重複して参加出来るバッジも用意されています。会期中はオースティンのホテルは基本的にバッジを手にしてSXSWに参加する人達に向けてリーズナブルな価格で提供される様準備されているので、これらのバッジの内で自分に合った物をを手に入れておく方が便利です(カンファレンスや市内の各種イベントもバッジが無いと、ほぼアクセスできません)。

また、期間内にはフィルム/ミュージック/インタラクティブの会期がそれぞれあります。相互に被っている場合もありますので、製品の投入と想定顧客をイメージした上で現地の滞在期間を検討するのが良いと思います。ホテルはとにかく会場至近の滞在先を選ぶべきです。早期の予約が望ましいのですが、後からエントリーしても待ち行列に入って根気づよく宿の獲得を行うのも方法です。もしも進出が本当に決まっている場合はより早くより安くより近い宿を押さえることをお薦めします。ホテルが会場から遠いと体力も移動コストも凄く高いので相当厳しいです。米国の場合チャージは人単位ではなく部屋単位なのでシェアして借りれば少し高い宿でも安価に利用可能です。

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Pinterest CEOのキーノート。インタラクティブアワードでも気さくなキャラクターは好感度大(ブレークスルーパートナーズ赤羽さん撮影)。

あと、トレードショーですが必ずしも必須とは言えません。効果的なのは既に製品が有って、それを海外の有力パートナーやメディアに向けて売り込むといった明確な問題意識がある場合。しかも、できるだけ現地で遭遇すべき相手先に事前に案内を投げておくとか、ちゃんとアポイントを入れておくなどの戦術的なアプローチを含めて出展をすべきです。

また、対ビジネスパートナー以外、つまり多くのエンドユーザー/コンシューマーに向けてのリーチを考えるなら製品仮説検証の対話の場として割り切るのか、あるいはトータルな製品デリバリーの一環として全体的なマーケティング戦略を睨んで使いこなす場合は、その全体戦略内で活きるブース出展を考えるべきです。たとえば位置情報系のサービスの場合、ブースだけでリーチする範囲は凄く限られますし製品体験も充分にデリバリー出来ません。そういう場合にはブースと言う「点」だけで考えず、会場やストリートも含めたプロモーションプランが必要です。フォースクエアはそういったアプローチが非常に巧いですし、オースティンそのものを活用する視点でのマーケティングは今後も課題になりそうです。

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異彩を放っていたカヤックのブース光景。名刺作成サービスは確実に受けていた(ビートラックスのBrandonさん撮影)。

今回、メディアジーンさんの茶室やカヤックさんの歌舞伎など、自国文化のアピールを効果的に出展に役立てていたケースが目立ちました。それ以外にもPicoTubeの初音ミクきゃりーぱみゅぱみゅ、PitaPatのメイドさんなどもその例です。個人的にも、メディアブース内で茶のセレモニーをさせてもらっていて確かに効果的だと感じるシーンが少なからずありました。

ただ、そこでのアイキャッチはあくまで顧客接点の入り口に過ぎません。アイキャッチして顧客に足を止めて、話題をうまく差し挟んで商談に移ると言うプロセスを考えなくては単なるエンターテインメントに終わってしまいます。そういった点では、美しいブースで存在感を出しながら製品価値をしっかり説明できていた洛洛さんのケースなど、もっと実効性の高いアプローチが今後益々求められるでしょう。いずれにしろ、製品性と製品メッセージと出展内容やキャンペーン内容が立体的に繋がっている様なプランが非常に望ましいと思います。

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渋谷Factoryで断続的に開催されたSXSW作戦会議の最終回に記念撮影の図(Factory西原さん撮影)。
 
今回は昨年秋のキックオフ以降渋谷のファクトリーで作戦会議を継続して行いました。また、年末には出場スタートアップによるピッチカンファレンスも行いました。その過程でインタラクティブアワードやアクセラレーターといったアワードに落ちた。あるいは期間に間に合わなかったなどの理由で脱落した方も多かった様な気がします。ですが、その考え方には一定の囚われがあるのかもしれません。たとえばTechCrunchDisruptですと、事前のクォリファイで落ちると出場価値は断然落ちます。でも、SXSWはアワード中心のイベントではなく、あくまでSXSW総体としての数え切れないイベントのごく一部に過ぎません。
 
そもそも、アワードという一断面よりも、SXSWの期間中あるいは期間前後でいかにエンドユーザーや関係者に訴えかけるのか?を等しく投げかけられている中での競争をシリコンバレーのスタートアップと同じ環境で問いかけられているのです。そこでSXSWがユニークだと思うのは、一部のジャッジメントや主催者ではなく、まさに現地に来ている多くのイノベーター達の評価をいかに獲得するのか?が中心課題になっていることです。
だからこそ逆にチャンスがあるとも言えますし、その反面大変だ!とも言えます。でも、もしも世界規模のサービスを創造しようというときに彼らの様な先進的ユーザー(しかもギーク層に限られていないのがミソです)に真剣に働き掛けて反応を見ると言うアクションはかなり意味があると僕自身感じていますし、そこで受け入れられない様では、製品としてそもそもワールドワイドにスケールしないのでは?とも思います。

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Sixth Streetでは、常に何かが起こっています。あと、オースティンは食事も美味しいのでお薦めです。

長々書き続けて来たSXSWですが、実際に出かけて分かることに比べると、拙いテキストでそれを物語ろうとすることの無謀を改めて感じます。僕は出掛ける度に幕末の多くの青年達が渡航した歴史や、あるいは過去に若き日本企業が海外を目指したこと(モータースポーツだと、マン島やルマン耐久、F1などへの過去のチャレンジが思い起こされます)スポーツ選手が単身本場に乗り込んだ時代(三浦や野茂のケースはまだまだ色褪せてはいませんね)など脳裏によぎります。

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SXSW2013への参加は既に世界中で始まっています。

 日本のスタートアップが置かれている状況はそのくらいにまだまだ開かれておらず、世界的な市場での存在感はありません。誰しも最初の一歩は物凄く大変です。そもそも言葉も文化も違う所にわざわざ出て行くモティベーションは普通に考えると余り無いでしょう。でも、もし技術でイノベーションを起こすため本気で新しい製品価値を届けようと思うなら、具体的な行動を通じて自分しか出来ない体験に身を投じる機会は捉えて行くべきではないでしょうか?SXSWだけが海外進出の場では有りませんが、ロケーションやソーシャルで大きな製品を届けようとするスタンスであれば無視は出来無い筈です。さぁ、SXSW2013に向けて走り出しましょう!